• 【JAEのSTORY#7】生徒たちの自己有用感を育むキャリア教育を
  • 2022.04.25

    #キャリア教育 #ドリカムスクール #リモート職場体験

    大阪市立白鷺中学校 青木信一先生インタビュー 

    2001年に東大阪でスタートした子ども向けの起業家教育(アントレプレナーシップ)教室。これがNPO法人JAEのはじまりです。その後、小・中・高校でのキャリア教育プログラム「ドリカムスクール」や、大学生を対象とした長期実践型インターンシップ「アントレターン」などを開発・実践。数多くの子ども・若者が未来を描くお手伝いをしてきました。ドリカムスクール開発初期より、先生の立場で一緒に試行錯誤してきてくださった大阪市立中学校教諭・青木信一先生のインタビューです。

    約20年間、中学生たちにさまざまな形でキャリア教育を提供してきた青木先生。JAEのドリカムスクールだけでなく、さまざまなキャリア教育プログラムに取り組まれ、生徒たちの成長を現場でサポートされています。

     


    ▲リモート取材にご協力いただきました!

    ―キャリア教育との出会いを教えてください

    約20年前に縁あって北欧へ教育視察に行く機会をいただいたんです。フィンランドとスウェーデンに3週間の旅程で行きました。ちょうど進路指導からキャリア教育へという転換期だったこともあり、視察テーマがキャリア教育だったんですね。その頃、進路主事として進路指導を担当していたんですけど、当時は成績を中心に進路を決める出口指導になってしまっているという現状がありました。正直、私自身もキャリア教育が一体どういうものかわかっていない状態でしたので、視察を通じてキャリア教育と出会ったという感じです。キャリア教育だけでなく、北欧の教育制度や教員の勤務体系などが全く日本と違っていて、いろんな衝撃を受けた視察でした。

    ―視察をきっかけにキャリア教育を学びはじめられたと

    視察から帰国後、日本キャリア教育学会に入会したり、当時立ち上がった関西キャリアステーション(現在は解散)の方とつながったり。そのときにJAEでドリカムスクール(以下ドリカム)を運営していた角野さんとも出会ったんです。そこからキャリア教育への取り組みをはじめました。

    ―はじめにドリカムに取り組まれたんですね

    はい。当時の勤務校でドリカムを導入し、企業と連携することになりましたが、それ以前はほとんど企業の方と連携することはなかった。「営利活動を助けてしまうんじゃないか」とものすごくハードルがあったんです。 でもドリカムを導入して、正直目からウロコでしたね。企業の皆さんの生徒たちへの想いがとても強く熱かった。「企業の宣伝に来られるんじゃないか」なんて心配は、本当に杞憂でした。むしろ教育に熱い想いを持った外部の方たちとたくさん出会うことができたんです。

    ―特にはじめの頃は一緒に試行錯誤していただいたと聞いています

    とにかく最初の3〜4年はJAEの角野さんにも「キレイゴトはいらん。楽しかったらええ。思い出を作ろう」というスタンスでプログラムを組んでもらっていました。生徒たちは枠にはめてしまうと上手にやったふりはできるんです。でも実際心から楽しいと感じられないと生徒も本気で取り組めない。「楽しい」が与えられれば、あとは生徒自身が吸収していってくれます。教員自身も生徒が本気で取り組めないプログラムだと、担当した教員が異動したときに途絶えてしまうと思ったんです。 これまで3つの中学でキャリア教育に取り組んできましたが、それぞれの卒業生とは今もたくさんつながっています。彼らからは「企業の方からちょっと言っていただいたアドバイスで、自分のいいところに気づけた」「学校の勉強は好きじゃなかったけど、なんかキャリア教育の時間は楽しかった」など、キャリア教育についての声を聞くことも多いですね。

    ―現任校でも、かなり外部連携が多いそうですね

    うちの学校に赴任してこられた先生は最初外部連携の多さにドン引きされますね(笑)。JAEとの連携をきっかけに多くの方とつながることができ、そこからずっとさまざまな形で外部連携を進めてきました。生徒たちのためにと言いながら、自分自身もたくさんのつながりができ、すごく楽しませてもらっています。 実践に参加した先生からも好評です。経験する前は外部との連携はもっと壁が高いと思われてるんですが、先生方も楽しまれていて。特に若手の先生方は柔軟に取り組んでくれますね。最初は頑なだった50代の先生たちが、取り組むにつれ生徒たちと同じように変容する姿を見るとうれしいです(笑)。

    ―JAEのルールもずっと活用いただいているとか

    「あいての意見を否定しない」ではじまるルール「あじみ」はずっと活用しています。キャリア教育のプログラム自体もずっとブラッシュアップしていますが、その辺りの発想もかなりJAEから学んだと言えますね。そこは学校の世界だけではなかなか生まれない。やはり学校は安全・安心がベースにあり、リスクマネージメントが勝ってしまうことが多いので。


    2022年度にJAEと協働で実施した未来手紙プロジェクトの一コマ

    キャリアファイルも活用されています

    いつも事後学習で感想文を書いてもらうんですが、3年間同じ小さな用紙を使用して「キャリアファイル」に綴じ、卒業時には渡しています。うれしいのは取り組むごとに自分を振り返るような内容が増えていくこと。23年生になると「楽しかった」というような感想はほとんどなくなります。キャリア教育は打ち上げ花火ではダメで、前後にきっちりフィードバックしていくことで力がついていくのかな、という気がしています。そのあたりの手法を学べたこともJAEと連携したことの良さだと思います。

    ―外部連携の良さ以外にキャリア教育の持つ意義はどういうところにあると感じておられますか?

    学校の活動はほとんど評定で表されてしまう現状があり、学校で生徒たちが見せるのは9教科の勉強を通した顔です。ですが、キャリア教育は評定で測らないので、生徒たちが遠慮せずに伸び伸びできる。我々もいつもびっくりさせられるんですが、ときに生徒たちは同一人物かな、と感じるほどリーダー性を発揮したりします。もちろん部活や生徒会活動でも見られことですが、それはあくまでも自分で選択した環境での話。プログラムを通じてチャレンジすることで自分が苦手だと思ってたことや全くできないと思ってたことが、実はできるんだ、という気づきになることがよくあります。 また、私は自分を大事にできる大人になってほしいと思い教壇に立っています。自己肯定感・自己有用感と言われるところですね。自分は必要な存在だと感じられるところで人ってがんばれると思うんです。キャリア教育のプログラムを通じて、チームで揉めたり調整したり、役割を担ったり。そこで、ロールプレイング的に経験することで自己有用感が育まれているのかな、と感じています。

    ―それってきっと自信につながりますね

    そうなんです。現任校では、松竹芸能株式会社が提供する「笑育」というプログラムにも取り組んでいます。生徒たちがペアで漫才を作って発表するんですが、普段話をしたことのない生徒同士がビジネスパートナーとして組むんです。小学校の時に喧嘩して以来、一度も話していない相手とペアになることも。その分、事前学習の中でクオリティの高い漫才を作ることが目的ではなくプロセスが大事であること、聴く側の姿勢などを伝えています。 途中で真っ白になってセリフがとんでも、それをどうフォローしあえるかが本当に大事で、発表が終わったときの達成感がどのコンビもすごくて。今6年目ですが、コンビが決裂して揉めたことはゼロ(笑)。ほとんどのコンビは力を合わせて乗り越える経験を積むんですね。日頃引っ込み思案な子が開花する場面も何度も見てきましたし、その後の授業で積極的になる姿も多く見てきました。

    他にもドリカムのプログラムで三菱重工さんとロボットの開発をしたときに、勉強も話すのもすごく苦手だけれどすごくがんばっていた生徒が開発後のプレゼンで入賞したんです。彼はそこで自信を持って、普通科しかなかった選択肢が広がり、進路の変更につながりました。これは9教科の授業や日頃の学校生活ではなかなか得られないかな、と感じます。

    ―進路選択に強くつながっているんですね

    キャリア教育に取り組む以前より、キャリア教育を経験してからの生徒たちの方が、成績以外の要素もしっかりと考えた進路選択になっているという実感はありますね。そんな選択をすると、進路先での満足度も違ってきます。

    ―今後のJAEに期待されていることがあれば教えてください

    大阪市全体で考えると、キャリア教育の取り組みはまだまだ発展途上中です。(JAEは)大阪府教委と連携されていましたが、今後、大阪市教委ともさらに連携し、大阪市のキャリア教育を一緒に盛り上げていってもらえたらうれしいですね。 また、最近も「未来への手紙」や「リモート職場体験」プロジェクトに取り組ませていただきましたが、今後も新しい取り組みするときはぜひお声がけいただきたいです。

    ―ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします

    聞き手:林(JAE広報)

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