• 【JAEのSTORY#4】長期実践型インターンによって大きく成長する学生たち
  • 2022.03.15

    #アントレターン #長期実践型インターンシップ #大学生 

    近畿大学経営学部教授・芦塚格先生インタビュー 

    2001年に東大阪でスタートした子ども向けの起業家教育(アントレプレナーシップ)教室。これがNPO法人JAEのはじまりです。その後、小・中・高校でのキャリア教育プログラム「ドリカムスクール」や、大学生を対象とした長期実践型インターンシップ「アントレターン」などを開発・実践。数多くの子ども・若者が未来を描くお手伝いをしてきました。2021年には創業から20年を迎えました。今回はJAEと連携いただいている近畿大学教授・芦塚格(いたる)先生のインタビューです。

    近畿大学経営学部で、中小企業経営論やアントレプレナーシップ論、経営戦略論などをテーマにされている芦塚先生。JAEとのつながりは2005年にスタートしました。学生への長期実践型インターン(以下アントレターン)の告知協力からはじまり、2019年からは「ビジネス実務講座」で協働しています。大学教授の立場から見たインターンシップやその意義について詳しくお伺いしました。

    ―まず先生ご自身の学生時代について、教えてください

    京都出身なのですが、北海道大学の経済学部に進学し、そこでアメフト部に入りました。下宿とグラウンドの往復、という学生生活でしたが、2年生の後期から特に関心のあった経営学の教授のゼミに入ったんです。経営学は比較的とっつきやすかったというか、企業の活動、ということで身近に感じられたんですね。その教授の下で経営戦略や組織論を学んだり企業訪問する機会をいただいたりして、そのゼミだけはサボることなく(笑)参加していました。
    当時は体育会系のクラブに所属していると、大手企業に就職が決まっていった時代。就職活動時仲間には失礼なんですけど、こんなに部活だけしてたやつがそんな大企業に行って大丈夫なのか、という疑問を抱いて。自分自身を見つめても、全く社会で通用するような状態じゃないな、と。もっと社会で通用するような状態で社会へ出たい、と感じたんです。そこで大学院への進学を決めました。教授に勧められたことと、実家のある関西圏ということで神戸大学の大学院に進みました。

    ―大学院ではどのような研究を?

    ちょうど修士1年生の冬に阪神・淡路大震災が起きたんです。指導教授が自治体から地場産業の被害状況調査の委託を受け、取り組むことになりました。震災2か月後、まだまだ焼け跡が残る中、少しずつ工場が再開しはじめた頃です。
    調査の中で、経済学や経営学の視点から産業の意義や産業構造なども調べていくんですが、社会的な構造も組み込まれていることに気づくんですね。歴史的にもざまざまな差別があったエリアで、産業と社会構造が切り離せないことを学んだこともあり、博士論文は長田地区の地場産業についてまとめました。そこから地場産業や中小企業、というところを研究の中心に据えるようになりました。

    ―大学院の後、1999年から近畿大学の教壇に立たれます

    中小企業経営論(3年生)、経営学(1年生)という科目を担当することになりました。その後、2005年にJAEの坂野さんがアントレターンに参加する学生の募集で来られたときに紹介されたのが、最初の出会いです。私自身もインターンを経験をしたことがなかったですし、学生にとってもまだまだインターンがメジャーではない時代でした。ただ、通常の大学のカリキュラムではできないような機会を作ろう、とされていることや実体験が得られる機会であることは理解できました。感度のある学生には通じるかもしれない、意欲ある学生にはぜひ挑戦してほしいと思い、授業の中でインターン生の募集の告知に協力していました。

    ―実際にインターンに参加した学生さんの様子は?

    なかなか個々の学生と授業以外での接点が少なく、知る機会は少なかったのですが、例えば3年次で再度授業を担当した学生から、あのときアントレターンに参加したんです、と教えてもらうことも出てきて。普通に大学で授業を受けているだけでは得られない経験をしていて、すごく成長したな、と感じられます。「あれ、この子もう社会人やったかな?」と錯覚するほど違いますね。社会に出る準備が整っているというか、実社会で揉まれた経験を経て雰囲気がもう学生のそれではない。就職活動の面接でも採用する側は、すぐに「違う」と感じると思いますね。大人と対等に向き合おうとする姿勢が培われていて「自分学生なんで」というある種の無責任さがなくなっているんですね。参加した学生たちを見てきて、手応えは確実にあります。
    本来は全ての学生に経験させてあげたいですし、自分自身の子どもにも絶対経験させたいな、と思っていたくらいです。もちろん受け入れ企業の数やサポート体制に限界もありますし、長期ということでのハードルも高いことはわかっているのですが。

    ―長期間というところがポイントでしょうか

    そうですね。就活のため、その企業や業界に行きたいからアピールするために、というようなインターンとは全く違う。純粋に自分を飾らない状態で経験できると思うんですね。それにはある程度の期間、最低6か月というのはすごく重要なんだと思います。

    ―中小企業をテーマにされていますが、企業視点でアントレターンを見るといかがでしょう

    ちょうど昨年、JAEさんにもご協力いただいて「長期実践型インターンシップが生み出す中小企業と学生の学び合い」(日本労働研究雑誌)という論文をまとめたんですが、中小企業が課題解決を目的として学生を受け入れることで、企業の資質向上に有益である、ことを提示させていただきました。
    中小企業の経営者が、学生と対等に向き合おうとする姿勢を持って、学生と目線を合わせる、同じように学ぼうとする姿勢が持てるかどうかが大事だと思います。経営者といえども、全てをわかって経営しているわけではない。学生にとっても初めての経験なので、その学生をサポートしながら一緒に成長していこう、そんな姿勢ですね。ある程度そのような企業さんを受け入れ先として選んでいただいていると認識しています。

    ―2019年からはインターンの募集協力だけでなく、授業でも連携を進めています

    「ビジネス実務講座」です。以前は経営者の話を聞く、という内容だったんですが、内容を刷新することになったときに、インターンを中心に据えた内容に変革しました。そこで本格的にご協力をいただいています。

    ―実務を学ぶための授業でしょうか

    1年生を中心とした半期の授業なんですが、将来について深く考えてもらう講義として設計しており、さまざまな分野で活躍する6〜7人のゲストに来ていただいています。ゲストの中にはインターン受け入れ企業やインターン経験者も。話を聞く中で、必ず受講生間で意見交換して振り返る時間を取っています。そこで内省することで、自分にとってゲストスピーカーの話がどういう意味を持つのかを考えてもらっています。
    結果、自分の現在地や位置付けを意識し、このままでいいのか、何ができるのか、という実感を持てるようになっていますね。その中でインターンシップや他の可能性を見つけられるようになれば、と期待しています。


    ▲ゲストの話を聞くだけでなく、意見交換でさまざまな気づきを得る

    ―手応えはいかがでしょう

    1年生を中心に60〜70名の受講生がいますが、はじめは自分の将来について不安を持っていたり、よくわからない、という意識の学生たちがほとんどです。繰り返しさまざまなゲストの話を聞く中で、自分自身への気づきにつながり、踏み出そうとする力につながっています。ここまで柔軟に振り返りに時間を使ったり、ゲストにたくさん来てもらってる授業はそんなにないと自負しています。
    また、最近では学生が企業と組んで商品を開発する、ということは珍しくないですが、そこで実際に学生が何を経験できて、どう成長しているのか、が重要だな、と。表に出る派手さはなくとも、一人一人の学生に蓄積される経験を大事にしていかなければ、と感じていますね。JAEさんと協働して4年目の今、理想的な形になってきています。

    ―外部機関であるJAEと連携することの良さは?

    大学とは違った立ち位置で、ずっと学生の学びや機会をサポートされてきたことに意義があります。連携によって大学だけではなかなか実現できない『将来につながるような職業観を育む経験』を提供できることはすごく重要です。大学はまだまだアカデミックであることに縛られている部分もありますし、私自身にも大学は職業訓練校ではない、という葛藤もあります。ですがアカデミズムと社会に求められる人材を育成することとのバランスを取りながら、海外のようにインターンを組み込むことは、意義があると思っています。今後もさらにタイアップしていきたいと考えていますね。

    ―今後もぜひよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

    聞き手:林(JAE広報)

    芦塚 格(2021)「長期実践型インターンシップが生み出す中小企業と学生の学び合い
    <特集 日本におけるインターンシップの展開と現状>『日本労働研究雑誌』第733号(2021年8月号)、pp.58-72、労働政策研究・研修機構

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